第93期五月祭常任委員会委員長の片野あかりへのインタビューです。 今年の五月祭の延期を決断し、オンライン開催にいたるまでの経緯と、それにかける思いをまとめました。
なぜ延期を決断したのか
そもそも延期をしたのは、五月祭を中止にしないためというのが最も大きな理由です。本郷・弥生キャンパスで開催する五月祭だからこそ出展できる学科企画や、五月祭を大切な発表な場としている団体の存在を考えると、今年しかない第93回五月祭を中止することは大きな痛手となるという思いで延期を決断しました。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、5月開催を目指したまま準備を続ければ、直前で中止することになってしまう事態も考えられましたし、直前で延期という判断をすれば、参加する企画の方々の金銭的負担が大きくなったり、延期した際に委員会ができる支援も少なくなったりすることから、3月に延期の判断をしました。
延期することへの賛否
延期するかどうかを決める議論では、もちろん委員会内にも反対意見がありました。
延期しても企画は参加してくれるのか、院試や就活などで活動に時間を割けない委員が増える中で委員会が十分なサポートを提供できるのか、などといった意見です。
しかし、最終的には「参加したいという企画が一つでもある限り、委員会はできる限りのことをするべきだ」という意見に皆が賛同して、延期開催を目指すことにしました。
なぜオンラインなのか
延期を決断した当初は、いろいろな開催の形が考えられる中で、入構制限をしたうえでのオフライン開催を目指していました。しかし、新型コロナウイルスの感染状況などを考えると、入構制限をしてもオフラインでの開催は難しいと判断し、大学側とも協議しながらオンライン開催を目指すことにしました。
オンラインで開催するくらいならやらなくていいという人もいると思いますが、委員会の考え方はそうではありません。学園祭の大切な意義は、それが「学生の学術・文化活動の発表の場」であることです。キャンパスに来場者が集まることができないオンラインでの開催となっても、その意義は失われないと考えています。
最終的に100以上の企画に参加していただけることになったので、オンライン開催を決断して良かったと思っています。
参加できなくなってしまった人
とはいえ、例年よりも企画数が大幅に減少したことも事実です。大学との交渉のスケジュールに余裕がなく、委員会としても初めてのオンライン開催で手探りの部分が多くありました。大学との交渉の結果、屋外での企画実行ができなくなってしまったことの影響は大きく、参加したくても参加できなかった方が多くいると思います。そういう方が出てしまったことについては委員会の力不足だと思いますし、申し訳ない気持ちです。
また、オンラインだと何ができるか、何をすればいいか分からなかった人たちもいると思います。そういった人たちへのサポートももう少しできれば良かったなと感じています。委員会として今年できることはやったと思いますが、どうしてもカバーしきれない部分もありました。
大学との交渉
五月祭の延期・オンライン開催が決定されるまでで、最も苦しかったのは大学との交渉です。延期時の開催日をどうするか、そもそも五月祭を開催できるかと、一からの再スタートとなり、かなりの時間を要しました。交渉の時期に新型コロナウイルス感染者の数が増加したときは、五月祭が開催できるかとても不安な気持ちになりました。
大学側も新型コロナウイルス関連の対応に追われていたこともあって、こちらが思っているよりも決定に時間がかかったり、五月祭で新型コロナウイルスの感染が広がってはいけないということでさまざまな条件を課されたりしました。大学側の求めに応じて、新型コロナウイルスの感染防止に関する膨大な量の文書を1週間で作って提出したのも大変でしたが、今では良い思い出です。
最終的に五月祭を開催できることになったのは喜ばしいことですが、屋外での企画実行が認められないなど、目指していた形を100%実現できなかったのが残念な点です。
コロナ禍で問われる五月祭の意義
五月祭の意義の一つに、学内団体が年に1回発表する場を確保すること、そして、それを委員会がまとめて開催することで、個々の団体が発信するよりも多くのことができたり、より多くの方にご来場いただけたりする、ということがあります。もともと頭では分かっていたことですが、この期間により強く実感するようになりました。
五月祭を中止・延期するかもしれないという時期に、「五月祭が中止されるくらいなら自分たちで場所を借りて発表をしよう」というTwitterでの投稿を見ました。個々で発信しようとする人がいるのに委員会が五月祭の開催を諦めてはいけないと痛感しました。
また、例年より大幅に減ってはしまいましたが、オンラインでも100以上の企画が参加してくださるというのは、学内の団体にとっても年に1回の発表の場が意義あるものであることの表れだと思いましたし、そうした方々のために発表の場を最大限確保することが重要だと改めて感じました。
そして五月祭は、来場していただいた方の存在に刺激されて学生の活動がさらにレベルアップする起点となるような場所としての意義も持っていると思います。
委員会が果たす役割
例年とは異なった形での開催に向けて準備をしていく中で、五月祭にとって五月祭常任委員会が果たすべき役割に改めて気づかされることにもなりました。
例年は五月祭が開催されることは当たり前でしたが、今年は5月の開催を取りやめてから延期開催が決定するまでのあいだ、五月祭の開催ができるかどうか分からない状況になりました。五月祭が開催できることは当たり前のことではなく、開催そのものに委員会が責任を持っているということを実感しました。
また、オンラインでは運営や広報などの面で各団体が独自に発表することの難易度が上がります。そうした中で、委員会がプラットフォームを提供し、運営や広報を行うことで、発表の場を確保できたことには大きな意義があると思います。
これまでも委員会は「企画のため」の活動を行ってきましたが、イレギュラーな事態の中で本当に「企画のため」になることは何か、と考える機会にもなりました。例えば、オンライン配信のための個別相談会を複数回にわたって実施したのは新たな取り組みです。
このように、委員会が果たすべき役割を再確認できたのは、オンライン開催を目指した今年だからこそのことかもしれません。
学園祭は大学生の文化
オンライン開催を検討する中で、オンライン化を模索するほかの学園祭の実行委員と意見交換をする機会も増えました。ほかの大学がオンラインで開催するのだから、私たちもオンラインで開催できるはずだと刺激を受けました。
最近ほかの大学の委員と話していて印象的なのは、皆それぞれで活動しているのに考えることは同じだということです。残念ながら中止になってしまった学園祭もありますが、オンライン化してでも学園祭を守ろうとする委員がいるからこそ、学園祭の歴史が守られています。そんな様子を目にして、学園祭は大学生の文化だと感じました。
五月祭に向けて
例年に比べてスケジュールに余裕がない中、企画の方も委員も日々準備を重ねています。
オンラインに「なってしまった」第93回五月祭ではなく、今年にしかないやり方で学生の発表の場を守ったのが今年の五月祭です。通常通りの開催ができないことに一委員としては残念な気持ちもありますが、そのことをマイナスに捉えず、逆境の中で学生が全力で可能性を模索した結果だということを分かっていただければと思います。
できるだけ多くの方に来ていただいて、楽しんでもらうことで、企画の方にとっても委員にとってもやってよかったと感じられます。当日はぜひたくさんの企画をご覧いただき、「初めて」の五月祭、そしてそこで頑張る学生たちを応援してください。