人生の多くの問題には「マッチング」の側面があります。例えば、多くの方が経験したであろう高校や大学などの入試は学生と学校のマッチングであり、また就職活動は学生と企業や省庁などの組織とのマッチングです。
そのほかにも、待機児童問題やコロナワクチンの配分、さらには政府組織内での部署への配属など、マッチングの問題は政府、公的機関の業務とも切っても切れない関係にあります。
こういった問題は経済学の「マッチング理論」という分野で研究されており、コンピュータで自動的にマッチングを最適化する方法が分析されてきました。
さらに、この理論を使って具体的な社会の制度設計や改善を科学的に行う「マーケットデザイン」という研究分野が今おおいに盛り上がっており、例えばアメリカでは公立小中学校への入学業務に広く使われています。過去10年間に2度ノーベル経済学賞の対象となり、世界では常識になりつつある「制度設計の科学」ことマーケットデザインの経済学を紹介します。
今回の講演の狙いは、日々の生活や業務で直面するマッチング問題の解決方法を考えるためのヒントを提示することです。
また、マッチング制度の大部分はコンピュータを用いて自動化し最適化を行うため、政府や公的機関のDXを具体的にどう行っていくかのヒントとしても活用できます。
小島 武仁先生
東京大学経済学部教授
東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)所長
専門分野は人と人や人とモノ・サービスを適材適所に引き合わせる方法を考える「マッチング理論」と、それを応用して社会制度の設計や実装につなげる「マーケットデザイン」。日本の研修医マッチング制度や待機児童問題を改善する具体的な方法の発明などで知られる。多くのトップ国際学術誌に論文を発表し、受賞多数。数々の指標で最も生産性の高い日本人経済学者とされている。