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あなたはどっち派?山×海対談


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本日は「山×海対談」ということで、それぞれ山、海の生き物に関する展示を五月祭にて行う、東京大学狩人の会、東京大学農学部水圏生物科学専修の方々に来ていただきました。よろしくお願いします!

狩猟と水産、それぞれの魅力


東京大学狩人の会の画像 狩人の会
狩猟は人間が山で生きてきた生物だということを一番自覚できる活動だと思います。現在では狩猟をできるのは貴重な機会です。狩猟というのは、ただ単に動物の命を頂くだけではなく、山の環境を五感で感じ取ったり、獲物と心理戦を繰り広げたりすることでもあります。
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狩猟活動を行っていると、野生動物は意外にも賢く、人類の知恵が試されているということを感じますね。例えば、イノシシ相手には、足跡や匂いだけで人が通ったことがばれてしまいます。動物はフィジカル面や環境の変化への敏感だという点で人間より優れているため、舐めてかからずに知恵を絞らないと人間はなかなか勝つことができません。また、狩猟では罠を用いるときには、獲物が一番通りそうな場所を探す必要があります。そのため、糞や足跡などを見つける観察眼が試されるんです。活動を通してそういった観察を行う習慣が身についたため、昔と比べて山を登ったときに目に映るものが多くなり、楽しみが増えました。
東大水族館の画像 水族館
哺乳類は学習を行うため個体ごとの知能の差が強いというのは新鮮ですね。魚を獲るうえでは集団を相手にするため、狩猟では個体を相手にするということはとても興味深く感じました。
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研究者の視点にはなりますが、水産の一番の魅力は「未知」だと思います。陸地には我々が踏み込めない場所はほとんどない一方、海は浅いところから深いところまでほとんど自分の目で確認することができないため、陸上と比べて未知数なことが多いです。例えば、太平洋のウナギの産卵場所の研究は1930年代に始まっていますが、正確な場所が分かったのは21世紀になってからでした。
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海洋研究で難しい点として、魚の生態の把握が挙げられます。さらに産業利用のためには、「どれだけ海の中に魚がいて、どれだけ獲っても大丈夫なのか」を調べる必要もあり、研究のしがいがあります。
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また、養殖の観点では、食べ物である植物を育てれば増やすことのできるウシやブタなどとは異なり、魚は別の魚を食べて育つため、自然にいる小魚でまかなえる数以上にブリやマグロなどの肉食魚を増やすことが難しいです。そのため、植物や虫のたんぱく質などを食べさせることで、自然環境下で育つ量以上にブリやマグロを増やすための研究をしている方もいらっしゃいます。陸上の家畜と比べて、未研究なところが多いという点が水産の魅力だと感じますね。
東京大学狩人の会の画像 狩人の会
マグロの養殖が行われているということは全く知りませんでした。
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資源量の減少を食い止めるため、マグロを漁獲している国には漁獲量の制限が課されています。そのため、養殖のマグロで人間の食べる分を補おうと研究が進んできて、現在では完全養殖に成功しているんです。制限によって資源量も回復してきて、近いうちに目標個体数を突破できそうです。

標本に関する裏話


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展示される標本について、下準備などの裏話を教えてください。
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手元に頭骨が2つあるのでお見せしながら紹介します。
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1つ目はイノシシの頭骨です。こちらは今年2月の合宿の際に、罠にかかっていたイノシシを解体した時に残ったものです。動物の頭の肉をそいで骨だけにするのは結構大変です。まず除肉の作業では骨を無くさないよう注意しながらできるだけ肉や神経を取り除くんですが、なかなか綺麗にならないんですよね。正しい方法ではないかもしれませんが、8時間ほどそのまま煮て肉を落としています。肉はこれでほとんど落ちますが、さらに脱脂という工程が標本作成には必要です。脱脂とは骨の中の油脂を抽出する作業で、これをしないと後から油脂が滲み出て、かびたり虫が湧いたりする原因となります。脱脂のためには10L以上のアセトンに漬ける必要がありますが、アセトンは揮発性かつ可燃性をもつため管理が大変です。
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また、綺麗な頭骨を残せるようにとどめをさすのもとても難しいんですよね。銃を用いるときは、胴部分を撃つと食べられる部分が減ってしまうため、頭部付近を撃ちます。そうすると、頭の骨を割ってしまうことがあるんです。確実に綺麗な頭骨を獲るには、ナイフなどでとどめをさす必要があり、とても難しいです。先ほどお見せした頭骨は、肩のあたりを何度も刺して仕留めたときのものです。その代わり、肩の部分は食べられませんでしたが(笑)。頭骨は綺麗に残ったため、見ていただけると嬉しいです。
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もう1つ、こちらは有害鳥獣捕獲の許可を得ている方が獲ったキョンの頭骨です。キョンは牙がついているなどのシカとの共通点をもつ一方で、シカにはない器官も多くもっています。会場でキョンとシカの頭骨を直接触って観察すると、多くの知識を得られるのでおすすめですね。
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こちらは頭骨とはサイズが全く違いますが、魚の体の筋肉部分を透明にして骨だけを着色した透明標本というものを展示販売します。写真をお見せしますね。
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こちらはクロダイの透明標本になります。魚の骨には硬骨と軟骨の2種類があり、硬骨は赤い色、軟骨は青い色に分けて着色されています。硬骨魚類であるクロダイはだいたい赤く、目のあたりなどのみが青いです。
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標本を作る際には、まず全部の皮を剥ぎます。小さい魚の皮をちまちま綺麗に剥いで、内臓や目を取って初めて着色できる状態になります。これが大変で、細かいのでどうしてもミスをしてしまうんですよね。写真のものは綺麗にできていますが、展示しているもののなかには背びれの部分が少し取れているような標本もあります。そういうものを見て「疲れていたんだなあ」と思っていただけると嬉しいです(笑)。
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我々は基本的に釣りをしたり海に潜ったりして獲った魚を使っています。また、水圏生物科学専修では漁業を行う5日間の実習があり、そこで獲った魚も使っています。いろいろな魚の標本をぜひ手にとって見ていただきたいと思います。また、実は販売もしているんですよ。最近はインテリアとして流行っていますし、お求めやすい値段になっているので良ければお買い上げください。
東京大学狩人の会の画像 狩人の会
皮を剥ぐのが大変なところは、海でも山でも同じなんですね。イノシシとはまた違う大変さがあると感じました。また、狩人の会も展示物の販売をしています!おそらく東大水族館さんほどお求めやすい値段ではありませんが、過去にはイノシシの頭骨が売れたこともあります。

注目してほしいところ


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五月祭当日の展示で注目してほしい部分を改めて教えていただきたいです。
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展示のメインは骨です。骨を自分で触り観察していると、さまざまな疑問が浮かんでくると思います。その後自分で調べたり、人に聞いたりすることで新たな知識を得ることができます。こうして実物を見て学ぶことで、本の勉強では得られない楽しさを感じられます。また、博物館などでは標本をガラス越しに見ることしかできないことがほとんどで、手にとって観察できる機会は貴重だと思います。さらに、同じ動物の骨を複数並べることでその動物の特徴を見つけやすくしていますので、自分で特徴を発見する楽しさも感じられるかと思います。来場者の方々には、自分で観察して新たな知識を発見する面白さを大事にしてほしいですね。
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水族館というくらいですから、先ほど話した透明標本だけではなく生きた魚も展示します。子どもたちに魚に興味を持ってもらうことに主眼を置いているので、「こんな生き物がいるんだ」と体感して、将来的に水産系に関わってくれる方が出てくれたら嬉しいですね。展示物の周りには説明を書いた紙やプレートを置きますし、疑問があれば水圏生物科学専修の学生が答えます。そういったところで子どもたちに生き物を通した学習をしていただけたらと思っています。

山と海、それぞれの自然に触れて


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最後に、山と海、それぞれの自然に触れて感じていることを教えてください!
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狩猟をしていると、自給自足するということはいかに大変かということを実感し、便利な道具がない昔の人間に対して尊敬の念を抱きます。そういった点で狩猟が好きですね。それだけでなく、狩猟ができるような山、そしてそこに住む動物たちに対して感謝の思いをもつようになりました。
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日本の国土面積はさほど大きいとは言えませんが、排他的経済水域は世界トップクラスの大きさです。そんな海が身近な日本だからこそ、海の中の何万何億何兆という生命にも目を向け、未知の部分に興味をもって考えていただけるようになれば嬉しいです。

対談参加者